3月18日、第8回マリインスキー国際バレエフェスティバル5日目「白鳥の湖」。この日の舞台には、ボリショイ劇場から、マリーヤ・アレクサンドロワがゲスト出演。その圧巻の舞台の様子を、印象的だった部分を中心に、ほんの少しレポートします。
「あれ?」・・・第1幕第2場、森の湖畔に登場したアレクサンドロワを見た時、最初に頭に浮かんだのがこの言葉。そこには、私たち日本人のバレエファンが見慣れた、あの陽性のオーラを煌々と振りまくアレクサンドロワの姿はありません。どこまでも透明でガラスのような美しさを持つ白鳥の女王オデットの姿がありました。真っ直ぐに前を見つめる凛として澄んだ眼差しが、静かで穏やかな印象を与えます。
彼女のオデットで特に記憶に焼き付いている場面は、第1幕第2場のコーダ。天を仰ぎ大きく羽ばたきながら力強くアントルシャ・カトルとパッセを繰り返す場面は、「彼に賭けてみよう」という彼女の強い決意をはっきりと象徴しており、物語全体の中でも、とても重要性を帯びていた場面と言えるでしょう。
さて、第2幕で宮殿に現れたオディールを一言で表すならば、とにかく“したたか”。
始めのうち、派手でもなく、大げさでもなく、ただ意味ありげな微笑を王子に向ける姿は、匂い立つような艶やかさに包まれています。そんな彼女に王子はどんどん惹かれていき・・・とどめの一発を撃ったのは、そんな王子の様子を見て本性を表した彼女の高速グラン・フェッテ・アントゥールナン。勢いよく一気に王子の心を吸い込んでしまったように見えました。テクニック的にも、4回に1回前アチチュードのピルエットを挟むという高度なもので圧倒的な迫力。
王子にリフトされながら勝利を確信した不敵な笑みを浮かべるオディールの姿に、つい鳥肌がたちました。![]()
しかし、最後になんといっても特筆しておきたいのが、第3幕、宮殿から戻ってきたオデットの嘆きのソロ。いまや彼女の心は、ひびが入り「パリン」と割れてしまったガラスのよう。絶えず心が涙を流し、床に崩れ落ち絶望に打ちひしがれ、天に向かって悲痛の叫びをあげる・・・アレクサンドロワの表現力にただただ「ブラボー」です。
全体的に見て、終盤に近づけば近づくほど舞台上の出来事が観客の心にリアルに響き、尻上がりに大盛り上がりを見せた、見応えのある素晴らしい公演でした。
驚いたのは、アレクサンドロワがマリインスキーのK.セルゲイエフ版「白鳥の湖」を、あそこまで自分のものとして踊りこなしていたということ。もう何度も踊りこんだ結果の舞台、と言われても信じられる位の完成度の舞台に、「これがマリーヤ・アレクサンドロワか・・・」と彼女のダンサーとしての無限の可能性に改めて感服すると同時に、「これが普段踊りこんでいるグリゴローヴィチ版だったらどうなってしまうんだろう・・・?」と若干恐れにも似た強い興味を掻き立てられました。
Photo:N.Razina
レポート: チアトラールカ
